公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所
NEWS RELEASE
- 2021年1月25日
- 2020年の出版市場を発表
紙+電子は4.8%増の1兆6,168億円、コミックの拡大で2年連続のプラス
- 出版業界の調査・研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所(所在地:東京都新宿区、理事長:浅野純次)は2020年(1〜12月期累計)の出版市場規模を『出版月報』1月号(1月25日発売)で発表しました。
紙と電子を合算した出版市場(推定販売金額)は、前年比4.8%増の1兆6,168億円のプラス成長となりました。紙の出版市場が同1.0%減と小幅なマイナスにとどまり、電子出版市場が同28.0%増と大きく伸長したことで、2年連続のプラスとなりました。出版市場全体における電子出版の占有率は、24.3%。前年の19.9%から4.4%上昇し、2割超の規模にまで拡大しています。
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- □ 紙市場は1.0%減で健闘、コロナ禍と「鬼滅の刃」ブームが大きく影響
- 2020年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1.0%減の1兆2,237億円。内訳は、書籍が同0.9%減の6,661億円、雑誌が同1.1%減の5,576億円。いずれも減少幅が非常に小さく、健闘しました。その要因は、コロナ禍での生活様式の大きな変化(外出自粛による在宅時間の増加、娯楽の制限など)で読書の需要が高まったことと、コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の爆発的ヒットが挙げられます。『鬼滅の刃』はコミックスのみならず、書籍のノベライズ作品や関連付録を添付した雑誌など、その販売効果が出版物全体に波及し、20年の市場を大きく底上げしました。
- 書籍は、3月2日から始まった学校一斉休校を機に学参、児童書が大幅に伸長し、年間を通して好調に推移しました。このほか文芸書、ビジネス書、コンピュータ書、ゲーム攻略本など前年を上回ったジャンルが目立ちます。
- 雑誌はコミックス(単行本)が約24%増の大幅増となり、月刊誌(コミックス、ムック含む)が同0.5%増と1997年以来の前年超えとなりました。週刊誌は同8.5%減と苦戦。月刊誌のうち、定期誌は3〜6月には発売中止・延期が相次ぎ、メジャー誌の休刊も続出し、約9%減。ムックも約14%減と低調でした。コミックスは『鬼滅の刃』の桁違いの伸びに加え、そのほかの作品もヒットし、2割超の伸びを示しました。
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- □ 電子出版市場は大幅増、コミックのシェアは約9割に
- 2020年の電子出版市場は前年比28.0%増の3,931億円と、大幅な伸長を示しました。内訳は、電子コミックが同31.9%増の3,420億円、電子書籍が同14.9%増の401億円、電子雑誌が同15.4%減の110億円。コミック、書籍の伸長は、コロナ禍の「巣ごもり需要」でユーザーが増加し、客単価も上昇したことが要因。
- コミックは『鬼滅の刃』の大ヒットと「異世界」系作品や電子書籍ストアオリジナル作品の牽引で、大幅増。電子市場における占有は87.0.%(前年より2.6%増)となりました。
- 書籍は、東野圭吾、湊かなえなど20年に人気作家が電子化を続々と解禁したこともあり、順調に成長しています。雑誌はシェアの大きいNTTドコモの読み放題サービス「dマガジン」の会員数が春先に下げ止まったものの、夏以降再び減少し、3年連続で二桁減となりました。
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- ※電子出版市場規模は、読者が支払った金額を推計したもの。広告収入は含まない。雑誌には定額制読み放題サービスを含む。
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- なお、本レポートの詳細は、『出版月報』2021年1月号(1月25日発行、頒価2,200円)に掲載しています。